sat's blog

2008/12/17

中公文庫『宇宙からの帰還』立花隆 著 を読む

完読するのに約1週間もかかってしまった。
また、単行本の出版から約26年、文庫化してからも約23年経っての完読である。
なぜこんなに時間がかかったのか、理由は簡単である、立花隆氏があまり好きな作家ではなかったためなのだ。
私が立花隆氏を初めて気にしたのは『田中角栄研究~その金脈と人脈』であったが、好きではなかった「文藝春秋」系の作家と言うことが氏を遠ざけたものだと思う。
続けて氏は『日本共産党の研究』を発表したが、“自民党に打撃を与えただけ日本共産党にも打撃を与える”式の「文藝春秋」的公平さ、バランス感覚を示したため、かくて長い期間遠ざかることになったのだと思う。

さて、『宇宙からの帰還』であるが、航空宇宙論でも科学的側面からメスを入れたものではないことはご存知のことと思う。
主にアメリカ合州国(本多勝一氏の影響)の宇宙飛行士たちにインタビューをしまくり、宇宙へ出て地球へ帰ることが宇宙飛行士たちにどう影響を与えたのか報告したものである。
アメリカ合州国の宇宙飛行士はソビエト連邦(当時)の宇宙飛行士に対抗して、良きアメリカ合州国民たる宗教を持った人間が選ばれたため、立花隆氏の取材した大部分の宇宙飛行士は神との関係に深く立ち入ることになる。
ここで、立花隆氏の限界なのか、当時の情勢が許さなかったのかはわからないが、ソビエト連邦が選んだ無宗教の宇宙飛行士たちとのインタビューがぜひ欲しかったと思う。
宇宙開発での米ソ競争の中で、互いの立場から選択された宇宙飛行士がどのように考え思ったのか、これができていたら本書の重みはもっと増していたであろうと思う。

“宇宙好き”な一読者として本書を読んだ率直な感想は「あまり面白くなかった」、これではあまりにも立花隆氏に酷であろうか。

(B+)

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