sat's blog

2010/11/23

日本リアリズム写真集団第17回松戸支部写真展「海月」を観る

日本リアリズム写真集団第17回松戸支部写真展「海月」を観に行った。(A)

「秋深し・本土寺」亀雪子
この作家にとっては通いなれた場所なのであろう、風景の切り撮り方が上手い。
5枚目の遠景となった人物をもっと丁寧に撮って欲しかったと思う。

「里山で遊ぶ」遠藤利夫
この作家の大人目線が残念であった。
子供目線で撮ればもっと子どもたちの生き生きとした表情が引き出せたと思う。

「笹川の神楽(千葉県東庄町笹川・諏訪大神)」大川淑子
細かいところに気になるところがあるが、かなり撮り貯めてきたのではないだろうか。
切り撮り方は上手い、だが同じようなカットばかりになってしまったのは残念である。

「ひと休み」伊藤百合
5枚組みの作品であるが、階段で寝転ぶ男性の1枚で充分である。
夜のコーヒー缶はちょっとこじつけすぎではないだろうか。

「やさしいものたち」神山直子
獣の尻尾に優しさを感じるこの作家の視点が微笑ましい。

「写し絵」榎浩子
2L版のスナップ写真を25枚。
1枚1枚にはドキッとするようなものは見当たらないのだが、まとめて観ると作家の姿が出てくるように思える。
不思議な作品である。

「“愁花~二節~"」菊地美奈
逆転の発想である。
花の写真は綺麗な花を綺麗に撮るもの、それを壊してくれた。
なかなか面白い発想をする作家である、こういった発想は好きだ。

「“愁跡”」菊地美奈
“愁花~二節~"では冴えを見せてくれた作家だが、この作品では迷いが出たのだろうか。
よくよく見ればわかるのだが、“愁”が直感できない写真は残念ながら弱い。
もっとモチーフを大切にすべきだと思う。

「アンコール遺跡、寸描」小山貴和夫
この作品には解説文があり、この作家の思いはここにあるととってしまう。
たしかに作品はタイトルどおりのものになっているのだが、解説文が作者の気持ちであるのであれば残念ながらそれはほとんど撮れていない。
わざわざ解説文を書くのではなく、作品にそれを語らせるべきである。

「鯨のまち(房総和田漁港)」當摩勇雄
面白そうな題材であるのだが、作家が一歩踏み込んでいない。
そのため同じようなカットばかりになってしまい、作品が単調になってしまった。
たぶん、1回の撮影なのであろう。
1回のチャンスを活かすのはプロフェッショナルでも難しいだろう。

「夜行」ロスラー・ディエク
なかなか強い作品である。
夜のスナップショットという難しい光線の中でしっかりと人物を撮っている、上手い。
こういうモノクローム作品にはなかなか出会えなくなってきた、幸せである。

「清流と里人のハーモニー」中山味佐
7枚組みの作品であるが、3枚程度に絞り込んだほうが作品として完成度が上がったのではないかと思う。
出したい写真があっても出すことによって冗長になるのでは出さないほうが良いと思う。

「銚子初秋」吉田成助
典型的な“銚子”の写真であり、そこで止まってしまったのは残念である。
プリントも他の作品もそうだが、硬すぎるのが気になるところ。

「浦安-漁村時代の記録(1959年4月)」保坂茂夫
約50年前の作品であり、申し分ない作品である。
半世紀という時の流れは「写真は記録の芸術である」という言葉を思い出させる。

「初めての稲刈り」西垣享子
4枚組みであるが、全てが同じような距離感で残念である。
最後の1枚に写った人物の表情が良い、この1枚、単写真で充分である。

「穏やかな時間」湯浅きいち
現在の日本が切り捨てようとしている田舎の風景なのだろうか。
なくしたくない風景である。

「分断される街-外環千葉区間」松林久雄
開発現場の作品は数多く発表されているので、ついつい比較してしまう。
絵的にダイナミックなものがやはり強く、この作家は苦労しただろうが残念ながら弱い。
もっと強い絵を求めるのか、アプローチを変える必要があるだろう。

「“無限大”“青春”“宝”」中村孝子
作者の子どもだろうか、孫であろうか。
自分の一番大切なものを撮るのに邪念は入らない。
観ていても気持ちよい記録である。

統一テーマ「上野動物園」から「ブリッジ」べネック・リチャード
上野動物園というテーマからあえて構造物に目を向け、わざとブラして撮る。
確信犯だが上手い。

2 件のコメント:

  • ロスラーです。作品をご覧頂きましたありがとうございます。写真についてのご意見もとても嬉しいです。来年またお越しください。

    Blogger Yona Yona さんのコメント, 09:11 に投稿  

  • 観ていて嬉しくなる作品に出会えるととても幸せです。今回の「海月」で出会うことができました。幸せなことです。

    Blogger Unknown さんのコメント, 21:59 に投稿  

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