sat's blog

2010/08/11

岩波書店 同時代ライブラリー 321 『土門拳エッセイ集 写真と人生』阿部博行 編 を読む

本著は土門拳の戦前・戦中・戦後のエッセイを1997年に編纂して刊行したものである。

写真家の一人として土門拳の作品にはひととおり眼は通している。
学生時代、少ないこずかいを工面して『古寺巡礼』を購入してからの付き合いである。
しかし、文章のほうは残念ながら3分の1くらいしか読んでいない。
気になる本はあるのだが、なかなか手を出せずにいた。
本著はいわばダイジェスト版である。
とりあえず手にして読み始めたのである。
本著の土門拳は写真家というよりも著述家である、それだけ文章が上手い。
土門拳が推し進めたリアリズム運動は写真作品も当然のこと、こういった文章でも理論付けられていったのであることがよくわかる。
しかし、8月のこの時期に読んでいると、戦前・戦中の土門の主張が戦後何の反省の表明もなく、いわば唐突に“民主的”になってきていることに違和感を感じ得ない。
人間・土門拳の限界がそこにあったのかもしれない。
(A+)

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