sat's blog

2009/01/16

朝日文庫『釧路湿原』本多勝一 編 を読む

『釧路湿原』は三部からなり、本多勝一氏のほか中村玲子氏と杉沢拓男氏が執筆をしている。
本書は国立公園釧路湿原の観光書ではなく、ラムサール条約で守られた湿原ではなく観光開発などで破壊に瀕している釧路湿原の姿を豊富な写真と共に暴き出し、観光や開発という美名に隠されて実は破壊されていく釧路湿原の現実を告発している。
本書は非常にわかりやすい、本多勝一氏という元新聞記者の能力にもよるのだろうが、問題点がすぐ頭に入ってくる。
先に読んだ立花隆氏の著作とはここのところが大きく違うところである。
ほぼ同じ厚さの本であるが、3倍の速度、2日で読み終えてしまった。

こういったルポルタージュも著者により方向性が大きく変わってくるが、本書の示す方向、政治や企業によって破壊されていく大自然を守れない日本人の情けなさ、本質を理解できない愚かさを実感として感じる。

インターネットが普及し、テレビジョンでは多くの番組が流されている。日本中には多数の書籍が氾濫といっていいほど溢れている。
しかし、こうした“硬派”のルポルタージュ、弱者の立場に立ち見聞きしたルポルタージュは絶滅の危機に瀕しているといってもいいのではないかと思うことがある。
少し前だが、大手書店で店員に「ルポルタージュの棚はどこですか」と聞いたら、「ルポルタージュですか、あの、ルポルタージュってなんでしょうか」と聞き返されたことがある。
“ハウツー本”やいわゆる“実用書”、マンガが溢れかえっているが、例えば「日本の現状を知りたい」と考えその書籍を探すと情けない現状を目にすることになる。

こんなことではたして明日の日本が良くなっていくのであろうか。

(A+)

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