sat's blog

2009/03/14

クレヴィス『土門拳の昭和』を読む

本著は三越日本橋本店新館7階ギャラリーで行われていた 生誕100年記念写真展『土門拳の昭和』の図録であり、一般の書籍流通には乗っていない。

土門拳氏は強烈な写真をたくさん残しているが、末期は脳溢血を繰り返し、最後は意識不明のまま心不全で亡くなっているから、健康な身体で活躍をしたのはそれほど長くないのかもしれない。

また、酒田市の土門拳記念館ほどの展示もなく、図録も代表的な作品に絞っているため、余計にその印象が強くなる。

土門拳氏の顔は三つあると思う。
一つは戦前戦中のプロパガンダに加担していた時代の顔。
二つはリアリズム写真の先頭に立っていたときの顔。
三つは仏像や美術品を撮る顔。
そのどれもがつながって、“土門拳”となるのであるが、作品のためには頑固で一途な作家であったのであろうと思う。

リアリズム写真の流れの末流にいる者として、いつかは土門拳氏を超えなければならないと思う。
しかし、氏の作品は国境の山脈のように聳え立ち、近づくことさえ許してくれないかのようだ。

(A+)

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