父の目に映っている光景
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入院している父に会いに行った。
たぶん私と同年代では同じ人が多いと思うのだが、会いに行っても父と交わす言葉は少ない。
行かなきゃいけない、と思う心が重い足を病院に向かわせ、話し合うことない父子が5分かせいぜい10分向かい合っている。
外見だけ“親子”を取り繕ってどうするんだ、そんな思いが心を重くしていた。
「行って本でも読んでいればいいのよ」
友人のこの言葉が私を救ってくれた。
会話をしようとするからいけないんだ、そのことに気がついた。
家にいても一日中テレビを見ていた父だが、大部屋を気にしてか戦後派の父にとってレンタルテレビ代がもったいないのかテレビを借りていなかった。
退屈だろうからとラジオを持っていったがついぞ聞いているのを見たことがなかった。
毎週、レンタルビデオとパソコンを持って父の病室に行く習慣ができた。
聞けばいらないというが、聞かなきゃ言われることもない。
父は何も言わずパソコンの画面を見つめている。
約2時間、じっと見つめている、少しは楽しんでいるのだろうか。
天井を見た、一日のほとんどの時間父の目に映っている光景だ。
これよりははるかにマシなのだろう。
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