sat's blog

2009/11/27

新潮社 新潮文庫 や-5-26 『沈まぬ太陽(一) -アフリカ篇・上-』 山崎豊子 著 を読む

本著は「週刊新潮」で連載され、1999年に単行本で刊行され、2001年に文庫本として刊行された。

実はこの作品を読むのは二度目である、10年前に単行本が発売されたときに人から借りて一気に読んだ記憶がある。
今回改めて読もうと思ったのは、映画『沈まぬ太陽』を観たからである。

映画の感想は先に書いたが、実にタイムリーに映画が公開されたものだと思った。
この作品には参考となる人物、航空会社、事件があり、小説という形をとった告発である。
その航空会社=日本航空が経営危機で会社の存亡が危ぶまれている、その会社の体質を告発している作品でもある。

10年前読んだときには、国鉄の「民営・分割」化とダブらせて読んだものだ。
国鉄の「民営・分割」化は中曽根康弘が国鉄の赤字の原因を労働者=国鉄労働組合などに押し付け、国民の目を欺きながら闘う労働組合の解体を謀り、革新勢力をずたずたに“分割”した。
その雛形は日本航空が日本航空労働組合にかけた攻撃である。

会社=資本家と国家権力は民主的な労働組合運動を“アカ”呼ばわりし、組合員の団結を乱し介入してくる。
それが戦後一貫として続けられた結果が、“先進諸国”の中でも異常なほどの労働者団結の低下であり、会社のやりたい放題の現状であり、日本中に広がった不平等なんだろうと思う。

本書は全五巻のうちの第一巻であるが、すでに主人公の過酷な運命に共感と感動を覚える。
そして凶悪な会社の労務政策に、なぜここまで労働組合を嫌悪しなきゃいけないのか、疑問に思う。

この先、主人公にはまだまだ過酷な運命が待っているということはわかっている。
しかし、主人公の信念を通し続ける姿にある意味「安心して」読み続けることができると思う。
そして、10年前に読んだときとは違う、つまり私がその間に養ってきた世の中を見る目を確かめることができるのだと思うのである。
(A++)

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