sat's blog

2009/01/27

河出文庫『マスードの戦い』長倉洋海 著 を読む

この著書は1984年に朝日新聞社から『峡谷の獅子-司令官マスードとアフガンの戦士たち』を1992年に文庫化したものである。

ご存知の方もあると思うが、マスード氏はアフガニスタンのイスラム革命後に北部同盟の副大統領・軍総司令官・国防相となるが、2001年に自爆テロによって倒された。
「パンジシールの獅子」と呼ばれ、死後は「アフガニスタン国家英雄」と呼ばれた。

著者はフォト・ジャーナリストである。
本書を読むと、一流のフォトグラファーの面に、一流のジャーナリストの面が浮き出てくる。
フォト・ジャーナリストとはよく言ったものである。
写真家にも文章のうまい人はいないことはないが、ここまでのレポートを書ける人はそんなにはいないだろう。

なぜマスード氏なのか、なぜアフガニスタンなのかは、ベトナムに多くのフォトグラファーやジャーナリストが取材に訪れたことと同じ理由であろうと思う。
また、著者と比較的年齢が近かったマスード氏には人を引き付ける魅力もあったのだろう。

戦争、いや侵略がなければ多くの人たちが血を流すこともなく、涙することもなかった。
国は栄えたであろうし、人々が憎しみ会うこともなかったはずである。
特権階層が自分たちの利益を守ろうとし、超大国が自国の権益を守ろうと介入する。
憎しみが憎しみを呼び、悲劇が拡大していく。

宗教も思想も、本来は立派なものであったはずなのだが、個人の、特定の勢力の利益が入ってくるとおかしくなってくる。
権力は本質的に腐っていくものなのかもしれない。

マスード氏の宗教観は腐敗する前の立派なものであった、マルクスやレーニンがそうであったように。

(A+)

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