sat's blog

2009/12/02

新潮社 新潮文庫 や-5-29 『沈まぬ太陽(四) -会長室篇・上-』 山崎豊子 著 を読む

本著は「週刊新潮」で連載され、1999年に単行本で刊行され、2002年に文庫本として刊行された。

本著では主人公、恩地元が“アカ”のレッテルを貼られたまま部外から招聘された会長に抜擢されて部長として活躍するのだが、政治と会社内の派閥の暗躍にまたもや翻弄されていく。
小説であるからすべて人名は創造されたものであるが、ちょうど国鉄の「民営・分割」化と前後していた時期でもあり、モデルとされた人物は私には手にとるように浮かんでくる。
国鉄の「民営・分割」化の騒動に巻き込まれたものとして、この「会長室篇」はほぼ事実と相違ないであろうと思う。

本来私は「性善説」を信じてきた、いや、信じたいと思ってきた。
末端の管理者にも自らの信念と闘いながら、泣く泣く会社の方針に従ったものも少なくないことはわかる。
しかし、現実に“わるいやつら”のお先棒を担ぎ、労働者を分裂させ、お山の大将として利権を守ることに汲々としている者も見てきた者として、「性悪説」を採らざるを得ない無念さを感じる。

本作品に登場する国見会長のような人物が「民営・分割」化された会社にいても同じようなことが起こったであろうと思う。

日本航空やJR各社、NTT、JTなどなど、いずれも大同小異ではないのか。
官僚にしてもプロパーにしても組織は大きくなればなるほど腐っていくものではないか、そんな気がして絶望感を覚えるものである。

日本航空のおかれた現在の立場、JR西日本の事故後の動き、どれひとつとってみてもこの作品が告発していることとなんら相違がない。

小説という形をとった告発書なのである。
(A++)

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