sat's blog

2009/02/12

新潮文庫『産んではいけない!』楠木ぽとす 著 を読む

本著は2001年に太田出版より刊行されたものを2005年に文庫本化したものである。

最初、この書名を見て「逆説」だろう、と思って読み出した。
もちろん、著者も一児の母であるから子どもを産んだことを本当に悔やんではいないと思うのだが。

本著の内容は女性が「産んではいけない!」としか言うことができない日本の現実を鋭く指摘している。
子どもを産むことが出来るのは母親になれる女性だけである。
どんなに子煩悩であっても、平等な考えの持ち主でも、父親たる男性は子どもを産むことはできない。
どんなに男性が女性の力になろうとしても、自らの体内に異物たる生命を抱え1年弱も育てるのである。
産んでからも哺乳類たる人間は母親からしか母乳を出すことが出来ない。
どんなに頑張っても、自覚しても男性が出来ることは育児の周辺のことになるのだ。

また、日本社会は(日本だけではないかもしれないが)建前はともかく男性中心社会である。
会社を見てみよう。
子どもができた時に男性社員にも育児休暇を認める企業もあることはあるが、男性社員が育児休暇を取ることは稀であるし、はっきり言えばその社員の“勝手”である。
しかし、女子社員が出産となればどうしても育児休暇を取らないわけには行かない。
年齢的に考えても育児休暇は“損”である。
出産からある程度の年齢までの育児期間を休業することは、企業にとっても“企業人”にとってもキャリアが中断され、同期たちにおいていかれることになるからだ。

現在の日本の出生率は2を大きく割り、人口の減少が始まっている。
それも全体的な割合が一定に下がっていくのなら問題が少ないだろうが、高齢者層が増え若年者層が減っているのだ。
口先だけ「少子高齢化は問題」と言っている政府や政治家たちはこの現状をわかっていないだろう。
特に与党政治家の収入を見ればわかるが、この“連中”は高齢化社会がおとずれても本当に困ることはない“連中”なのだ。
「少子高齢化は問題」と“念仏”を唱えていれば票が集まると誤解している“連中”なのである。

この著者を含め子どもを愛する人たちが、「産んでよかった!」と思える社会を作るのは難しいが、それが実現される社会こそ本当の男女平等の社会のはずなのだ。

(A)

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