sat's blog

2008/12/20

新潮文庫『カメラが欲しい』尾辻克彦 著を読む

本当はこちらが先行していたのだけど、『追憶の夜行列車Ⅱ さよなら〈銀河〉』が後から来て抜いて行ったため、完読が後になった。

今は無き「カメラ毎日」の連載コラムを1986年に単行本にしたもので、さらに1988年に文庫化されたものである。

こういった本の場合、大抵は「ライカ」を中心として書かれているものが多いのだが、カメラ雑誌の連載ということもあり、様々なカメラについて言及されている。
カメラというメカニズム好きには納得のいく本である。

私も著者と同様、「カメラが欲しい」と常々思っている人間である。
ふだん使うカメラは1台、あってももう2台もあれば充分なはずなのだが、知らない間にどんどん増殖していく。
少々大型の保湿庫にはすでに入りきらないほどあるのだが、先日また1台が追加された。

友人は“沼”というが、確かに底なし沼であり、そこから脱出することはかなり難しい。
悪魔の趣味であるのかもしれない。

(A-)

2008/12/19

SiGnal 『追憶の夜行列車Ⅱ さよなら〈銀河〉』種村直樹 著を読む

種村直樹氏から新刊の『追憶の夜行列車Ⅱ さよなら〈銀河〉』にサインしたものをいただいた。
誠に光栄至極である。
早々に読書計画を変更して読み出すことにした。

出版社「SiGnal」は「小社は、鉄道著作で知られるレイルウェイ・ライター種村直樹さんの書籍を出版するとともに…」(オフィシャルWebより)と明記してあるとおり種村直樹氏の今は絶版になったり、手に入りにくくなった書籍を再編集して出版している。
あまり小さな書店では見かけることは少ないのだが、種村直樹氏の作品を読み直したいと思っている読者にはありがたい出版社である。

「○○○○様 We Love Train Travel! 2008.12.15 種村直樹」とサインしていただいた。
「I」ではなく「We」としていただいた気持ちが大変に嬉しく、またありがたいと思った。

本の内容は、1994年から2001年までの『鉄道ジャーナル』誌に掲載されたルポルタージュに、松本典久氏との対談「〈銀河〉が駆けた日々」(進行はSiGnalの富田康裕氏)である。

皮肉なことに、「富士」「はやぶさ」の来春のダイヤ改正での廃止が発表され、“追憶”が夜行列車、急行列車にとって現実のものとなってきてしまっている現状に寂しさを感じながら読み終えた。

種村直樹氏は故宮脇俊三氏、川島礼三氏と共に鉄道界のビッグネームだが、お付き合いをいただいているということを抜きにしても一番親しみがあり、今後のますますの活躍を念じて止まない。

種村直樹氏に「最近は共通の思い出になるような列車が少なくなって寂しいですね」と話したことがあるが、JR各社の今の方向はまさにそれである。
かろうじて残っている「北斗星」「カシオペア」「あけぼの」「北陸」「トワイライトエクスプレス」「日本海」だっていつ廃止になっても不思議ではない状況にある。
「ムーンライトながら」「ムーンライトえちご」も非定期列車化されてしまった。
急行列車も事実上全滅状態である、「はまなす」「能登」「きたぐに」「つやま」しか残っていない。
たったの4本である。
「民営」化されたJR各社にとっては、儲からない列車は邪魔でしかない、とでも言っているようである。

著書を読みながら、種村直樹氏の言う「選択のできる列車」を残す努力が今のJR各社からは欠落している、と痛感した。
“お客様”の集まるイベント列車には積極的であるが、“記憶に残る列車”には冷たいとしか思えない。
鉄道博物館の集客力を見るまでもなく鉄道好きはまだまだ多いのだが、本当に大切にされているのだろうか。

悲しい、原稿が書かれた時代から15年~7年経って楽しめる鉄道旅がだんだんとできなくなっているのを実感してしまった私がそこにいた。

(A)

2008/12/17

中公文庫『宇宙からの帰還』立花隆 著 を読む

完読するのに約1週間もかかってしまった。
また、単行本の出版から約26年、文庫化してからも約23年経っての完読である。
なぜこんなに時間がかかったのか、理由は簡単である、立花隆氏があまり好きな作家ではなかったためなのだ。
私が立花隆氏を初めて気にしたのは『田中角栄研究~その金脈と人脈』であったが、好きではなかった「文藝春秋」系の作家と言うことが氏を遠ざけたものだと思う。
続けて氏は『日本共産党の研究』を発表したが、“自民党に打撃を与えただけ日本共産党にも打撃を与える”式の「文藝春秋」的公平さ、バランス感覚を示したため、かくて長い期間遠ざかることになったのだと思う。

さて、『宇宙からの帰還』であるが、航空宇宙論でも科学的側面からメスを入れたものではないことはご存知のことと思う。
主にアメリカ合州国(本多勝一氏の影響)の宇宙飛行士たちにインタビューをしまくり、宇宙へ出て地球へ帰ることが宇宙飛行士たちにどう影響を与えたのか報告したものである。
アメリカ合州国の宇宙飛行士はソビエト連邦(当時)の宇宙飛行士に対抗して、良きアメリカ合州国民たる宗教を持った人間が選ばれたため、立花隆氏の取材した大部分の宇宙飛行士は神との関係に深く立ち入ることになる。
ここで、立花隆氏の限界なのか、当時の情勢が許さなかったのかはわからないが、ソビエト連邦が選んだ無宗教の宇宙飛行士たちとのインタビューがぜひ欲しかったと思う。
宇宙開発での米ソ競争の中で、互いの立場から選択された宇宙飛行士がどのように考え思ったのか、これができていたら本書の重みはもっと増していたであろうと思う。

“宇宙好き”な一読者として本書を読んだ率直な感想は「あまり面白くなかった」、これではあまりにも立花隆氏に酷であろうか。

(B+)