sat's blog

2010/07/30

小学館 BIG COMICS BC3360 『ダブル・フェイス 22』細野不二彦 著 を読む

本著は2009年から2010年に「ビックコミック」に連載された作品を2010年に単行本として刊行されたものである。

本巻も21巻から続いてストーリーが進んでいく。
また、主人公の重大な謎が明らかにされていることから、物語は終盤に向かって進んでいるものと思える。
この22巻では「ダブルフェイス」の意味も明らかにされた。
あと数巻で終わるであろうこの物語に引き込まれている。
やはりこうでないといけない。
(A)

2010/07/27

新潮社 新潮文庫 お-45-3 『博士の愛した数式』小川洋子 著 を読む

本著は2003年に単行本として刊行されたものを、2005年に文庫本として再刊したものである。

この作品は映画化されたからよく知られている作品だと思う、私もそうなのだが。
久しぶりの純文学の作品なのだが無理なく登場人物に感情移入ができ、読みやすい作品になっている。
記憶が80分しか持たないという数学者と、家政婦である私と子供の生活を淡々と描いていく作家の力量はすごいと感心した。

記憶が80分しか持たないということは、会う人すべてが初対面なのである。
こうしたシチュエーションをこの作家はどこから思いついたのだろうか。

数式のみを愛した博士は子供も深く愛した。
常に初対面の子供なのにである。

優しくなれる一冊に会えたように思う。
(A)

2010/07/23

講談社 モーニングKC1922 『BILLY BAT 4』浦沢直樹 著 ストーリー共同制作 長崎尚志 を読む

本著は2010年に「モーニング」誌上に連載された作品をまとめて単行本としたものである。

この作品は今までのこの作家の作品の例に違わず、スケールが大きいものになってきた。
第二次世界大戦直後の日本、古代のパレスチナ、中世の日本、そしてこの巻では時代が戻って再び第二次世界大戦直後のアメリカ合州国に移る。
この作家特有の“大風呂敷”が着々と進んでいる段階なのだが、この作品は大きなスケールの作品になっていくのだろうことは容易に考えられる。
まだまだ序章、この作品がどこへ向かっていくのかまだわからない。
世紀の傑作になるのか、収集がつかずに終わる駄作になるのか。
傑作で終わるよう期待する。
(A)

2010/07/21

小学館 BIG COMICS SPECIAL BCS2092 『宗像教授伝奇考 8』星野之宣 著 を読む

本著は2000年に「コミックトムプラス」誌、2008年に「文藝春秋」誌、「宗像教授伝奇考(特別版)、1993年に「コミックトム」誌、1995年に「ホラーM」誌で連載された作品を2008年に単行本として再刊したものである。

本作品の「コミックトム」版はこの第8巻で終了である。
しかし、この「宗像伝奇」というキャラクターはストーリーと共にここで終了するには惜しい。
この作家も編集者もそう思ったのではないかと思う。
「コミックトム」版の後、「ビックコミック」版が始まったのはうれしいことである。
魅力的なキャラクター、ストーリーを創造した作家に敬意を表したいと思う。
(A+)

小学館 BIG COMICS SPECIAL BCS1688 『宗像教授伝奇考 7』星野之宣 著 を読む

本著は2003年に「NHKスペシャル文明への道2 クビライ~世界帝国の完成~」に書き下ろされた作品を2008年に単行本として再刊したものである。

本作品は正確には第6巻からの続編ではない。
しかし、主人公である宗像伝奇教授の登場と、第7巻で取り上げられていた「源義経=チンギス・カン」説の延長として第7巻として刊行したものであろう。
「源義経=チンギス・カン」説は“トンデモ説”として取り上げられることも多く有名であるが、科学的な学説としては認められていない。
しかし、この作家の綿密な物語の構築によって「もしかしたら」と考えられてしまう。
漫画であるからこそ許される“夢”なのかもしれない。
(A+)

小学館 BIG COMICS SPECIAL BCS1687 『宗像教授伝奇考 6』星野之宣 著 を読む

本著は1999年に「コミックトムプラス」誌で連載された作品を2008年に単行本として再刊したものである。

本作品は漫画では珍しい知的興奮を沸き起こしてくる作品である。
この作家の作り上げた設定が、作品にリアリティを付加する。
謎解きの面白さばかりでなく、民俗学の面白さを伝えてくれる作品になっている。
(A+)

2010/07/17

映画『INCEPTION』 を観る

この映画は先行ロードショー観たため、事前の予備知識がないままであった。
最低限の設定は知っておく必要があると思った。
正直な話、最初の30分は眠気との闘いであった。
しかし、設定がわかるに従いその世界に引き込まれていった。
映画の約2時間という制約の中、本作品のようなSFモノは予備知識が必要なのかも知れない。

本作品に私が予備知識を持たなかったのは、私がレオナルド・ディカプリオのファンでなかったからかもしれない。
どうも氏には感情移入がし難い。
渡辺謙氏が出演している作品と知っていたらもっと早く予備知識を入れていたかもしれないが…。
いや、スタジオ・ジブリの新作「借りぐらしのアリエッティ」のマスクがなかったらもっと知っていたかもしれないが。

まぁ、歴史的な作品になるかはわからないが、よくできた作品ではある。
(A-)

2010/07/12

新潮社 新潮文庫 み35 1 『定刻発車 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?』三戸祐子 著 を読む

本著は2001年に『定刻発車-日本社会に刷り込まれた鉄道のリズム』として交通新聞社より刊行された単行本を、改題、加筆・改稿して2005年に文庫本として刊行したものである。

本著を読むまで日本の鉄道が平均で1分も遅れずに走っていることを不思議に思っていなかった。
しかし、改めて考えてみれば異常なことである、尋常なことではない。
欧米並みに10分程度遅れることに異議を唱えない国民性であれば、多大な投資も必要ないし、尼崎の事故は起こらなかったと考えるのはおかしいことなのだろうか。
チャップリンの『モダンタイムス』のように人間を歯車の一つにしてしまっている世界が日本なのではないだろうか。
この作家は鉄道人の技術とシステムを高く評価しているように思えるのだが、私には皮肉にしか思うことができなかった。
(B+)

2010/07/09

新潮社 BUNCH COMICS 『コンシュルジュ 20』藤栄道彦 漫画 いしぜきひでゆき 原作 を読む

本著は2010年までの「週刊コミックバンチ」に掲載された作品を2010年に単行本として刊行したものである。

本作品も20巻に達した、人気もそこそこあるようだ。
物語の舞台もニューヨークと東京に拡がり、登場人物もずいぶんと増えた。
忘れ去られたような登場人物もいるが、それほど散漫にならないのは作家の力量のなせる業なのであろうか。
掲載誌である「週刊コミックバンチ」が一時休刊するという。
この作品の扱いが気になるところだが、まさか打ち切りになることはないと思う。
そうであって欲しいものだ。
(A)

小学館 BIG COMICS SPECIAL BCS3244 『はるき悦巳短編全集 力道山がやって来た』はるき悦巳 著 を読む

本著は1978年に「平凡パンチOh!」誌、「マンガ少年」誌、「平凡パンチ」誌、1979年に「漫画アクション」誌、「少年ビックコミック」誌、1980年、1993年、1997年、1998年に「ビックコミック」誌、1999年に「漫画アクション」誌で連載された作品に未発表の作品を合わせ、2010年に単行本として発刊したものである。

この作者との出会いの作品は「じゃりんこチエ」であった。
この短編集に掲載されている作品にも「じゃりんこチエ」の雰囲気を色濃く出しているものがあり、懐かしく感じた。
「じゃりんこチエ」の単行本はずいぶん買っていたのだが、途中で飽きてしまい全巻揃っていない、悔やまれてならない。
なぜこの作家が10年ほど前から姿を消したのか、本著を読む限り理解できない。
力のある作家だと思うのだが、時代の流れに乗る作品ではなかったのだろうか。
「日の出食堂の青春」も再刊された。
この作家の時代が再びやって来たのかもしれない。
(A)

2010/07/07

講談社 アフタヌーンKC671 『新装版 ヨコハマ買い出し紀行 10』芦奈野ひとし 著 を読む

本著は2005年から2006年にかけて「月刊アフタヌーン」誌上で連載されたものを単行本化し、2010年に2006年に「月刊アフタヌーン」誌上で発表された「峠」を加え、新装版として再単行本化したものである。

この作家の言う、「てろてろの時間」、心地よいのんびりした時間の流れを描いた作品が終結してしまった。
近年、この作品ほど次の月の発行日が待ち遠しい本はなかった。
来月から次の巻が発売されないことを認めなければいけないは悲しい。
もっともっと読んでいたかった作品である。
(A+)

2010/07/05

小学館 BIG COMICS SPECIAL BCS1670 『宗像教授伝奇考 5』星野之宣 著 を読む

本著は1998年に「コミックトムプラス」誌で連載された作品を2008年に単行本として再刊したものである。

さて、“大人買い”してしまうとなかなか感想を書くのが難しくなる。
本編は相変わらず好調であるから、「おまけ漫画」について書くことにする。
4ページほどの「おまけ漫画」であるが、かなりコミカルな内容である。
しかし、基本的に登場人物の設定は本編と同じであり絵も同じであるから、物語との落差が面白いのだ。
一歩間違えば本編のイメージも崩してしまうが、それは上手く逃げている。
たった4ページの「おまけ漫画」ではなく、本編として描いてみたらどうなるだろうか。
ちょっとそんな思いが頭をよぎった。
(A+)

小学館 BIG COMICS SPECIAL BCS1669 『宗像教授伝奇考 4』星野之宣 著 を読む

本著は1997年に「コミックトム」誌、1998年に「コミックトムプラス」誌で連載された作品を2008年に単行本として再刊したものである。

本巻でもこの作家は絶好調である。
歴史の断片をつなぎ合わせ、一つの物語にしていく。
作家の苦しみが伝わってくる。
「コミックトム」版の『宗像教授伝奇考』は8巻、更に掲載誌を変えて連載が続くのであるからすごいと思う。
「宗像伝奇」というオーラを持った登場人物の創造を創造したことが成功につながったのであろうと思う。
物語と登場人物、この二つの太い柱がこの作品を支えている。
(A+)

小学館 BIG COMICS SPECIAL BCS1668 『宗像教授伝奇考 3』星野之宣 著 を読む

本著は1995年から1997年に「コミックトム」誌で連載された作品を2008年に単行本として再刊したものである。

素朴な疑問だが、この作家はこういった作品の原案をどこから持ってくるのだろうか。
民話や神話からヒントを得ているのだろうが、想像力と構成力がすごい。
この作品で示される仮説はアカデミックな学説に思えてくるのである。
(A+)