sat's blog

2010/08/30

小学館 SANDAY GX COMICS GXC229 『アスカ@未来系 3.0』島本和彦 著 を読む

本著は2010年に「月刊サンデーGX」誌で連載された作品を2010年に単行本として発刊したものである。

最近は長編になる作品が多いせいか、数巻で終わる作品は失敗作ではなかったのかと勘ぐってしまう悪い癖が付いてきた。
本巻でこの作品は終話である、打ち切りでなかったのだろうか、とやはり勘ぐった。
しかし、無理に長い話を短くしたふうではない、予定通りだったのだろう。

では、この作品が当初からこの分量であるとして考えるとすると、ちょっと物足りなさを感じ得ない。
この作家の持っている独特の勢いがこの程度の長さの作品には似合わなかったのかもしれない。
次の作品に期待することにしよう。
(B)

小学館 BIG SPIRITS COMICS BC3379 『電波の城 11』細野不二彦 著 を読む

本著は2010年に「週刊ビッグコミックスピリッツ」誌で連載された作品を2010年に単行本として発刊したものである。

この作家の作品は『ギャラリーフェイク』終了後、一気に重く暗くなってしまったような気がする。
デビュー当初の少年誌の作風は青年誌にはそぐわないのかもしれないが、俺としては初期の作品のほうが好きである。
しかし、やはり作家は自分の描きたい舞台で描くべきなのだろう。
(A)

2010/08/29

小学館 BIG COMICS SPECIAL BCS1828 『宗像教授異孝録 7』星野之宣 著 を読む

本著は2007年に「ビッグコミック」誌で連載された作品を2008年に単行本として発刊したものである。

本巻では「赤ずきんとカチカチ山、瓜子姫」「南総里見八犬伝」「吉備津の釜」が俎上に上がった。
この作家は民俗学を巧みに現在に結びつけることが上手い。
もちろん、古代史や民俗学だけでも充分にひきつけられるのだが、現代とリンクさせることによって物語に深みを増している。
よく描き込まれた絵も非常に効果的である。
(A+)

小学館 BIG COMICS SPECIAL BCS1496 『宗像教授異孝録 6』星野之宣 著 を読む

本著は2006年から2007年にかけて「ビッグコミック」誌で連載された作品を2007年に単行本として発刊したものである。

本巻では「竹取物語と浦島伝説」「天空の神話」「醜女」が俎上に上がった。
参考文献が上げられているが、この作家はどういったインスピレーションでこのような物語を作り上げたのだろう、悔しくなるくらいよく組み立てられている。
大人がしっかり読める作品である。
(A+)

2010/08/28

小学館 BIG COMICS SPECIAL BCS1020 『宗像教授異孝録 5』星野之宣 著 を読む

本著は2006年に「ビッグコミック」誌で連載された作品を2007年に単行本として発刊したものである。

本巻では「道成寺」「隕鉄と空海」「堤中納言物語から虫めづる姫君」が俎上に上がった。
恥ずかしい話だが「道成寺」のストーリーは本著を読むまで知らなかった。
まあ、本作品の解釈を鵜呑みにするわけではないが、きっかけを作ってくれたといえる。
本シリーズはそういった知的好奇心を刺激してくれるところに人気の秘密があるのではないだろうか。
この作品から民俗学、考古学への道を歩みだす若者もいるに違いないと思う。
(A+)

新宿ニコンサロンとコニカミノルタプラザを訪れる

新宿ニコンサロンとコニカミノルタプラザを訪れた。

■新宿ニコンサロン

〔新宿ニコンサロン〕
新鋭たちの写真空間juna21 髙橋あい写真展「ヤマ ムラ ノラ 子どもたちの 未来の子どもへ」

「静かだ」、この写真展を観た第一印象である。
日本とはとても思えないような静かな時を刻んでいるムラ、この作家はこのムラを丁寧に切り撮って観せてくれた。
少しばかり作品から受ける印象と写真展とのタイトルに違和感を感じたが、すばらしい写真展に仕上がっている。
(A)

〔ニコンサロンbis新宿〕
新鋭たちの写真空間juna21 幡野広志写真展「海上遺跡」

なんとも不思議な写真が並んでいる、じっくり観ているとなんだか「おかしいな」という気持ちが沸き起こってくる。
どうもデジタル処理がかなり行なわれているようだ。
絵の調子を整える程度のものは問題視するものでない。
しかし、絵を作り上げているほどいじっているのならばもう写真とは呼べないのではないだろうか。
主題を強調させたいのならばあくまでもカメラワークですべきである。
題材が面白いものだけにもったいないと思う。
(C)

コニカミノルタプラザ

〔ギャラリーA〕
古谷行男写真展「町・小町」

やっぱりモノクロームはいいな、と思う写真展であった。
地元が、地元に住む人たちが大好きな作家が撮ったものだということがよくわかる。
少し古さを感じるが、これもこの地域の現代の一断面なのだろう。
モノクロームフィルムを買い込んで自分で現像をやってみたい気になる写真展である。
(A)

〔ギャラリーB〕
前田敏行写真展「こどもたちの声がきこえる 1996-2009」

保育所での写真というが、子どもたちとの距離感の大きさが気になる。
現像も荒れ気味であり残念だ。
やはりモノクロームが輝くのは美しい写真の仕上がりにもよる。
今、これだけ子どもたちを自由に撮れるのは奇跡に近い。
作家はもっとその奇跡的なチャンスを活かして欲しいと思う。
(B)

〔ギャラリーC〕
ワンダーアイズ写真展「LOVE EARTH 世界の子どもたちが参加したプロジェクト・10年間の記録」

写真の“先生”について勉強をしたことのない子どもの撮った写真は、あれこれ考えずに撮りたいところをズバッと切り取っており、技術的な上手さはないが、ヘタな写真家の“作品”よりも観るべきものがある。
展示された作品はプロフェッショナルの写真家らが行なっただろうが、「写真教育」としては大成功だろう。
やはり、撮影の時には常に子どものような視線であることが必要なのだ。
(A-)

2010/08/27

ネコ・パブリッシング NEKO MOOK 1528 『ガイドブック最盛期の国鉄車両 直流旧型電気機関車(上)』浅原信彦 著 を読む

本著は2010年に発刊された。

もうほとんど封印しているのだが、時たま“鉄心”が頭をもたげ買ってしまう本が出る、本著もその1冊である。
JR以降の“キレイな車両”には興味が持てなくなって“鉄”を引退したのだが、国鉄時代となると別である。
先人たちが苦労して基礎を作ってくれたのである、それを忘れてしまっている現在がなさけない。
本著は名著、誠文堂新光社版のガイドブックを髣髴とするものがあるが、残念ながら図版はない。
鉄道模型を自作する者たちには必須のガイドブックだったのだが、“自作マニア”は絶滅してしまったのだろうか。
残念な気がする。
(A)

2010/08/23

講談社 モーニングKC1318 『天才柳沢教授の生活 29』山下和美 著 を読む

本著は2009年から2010年にかけて「モーニング」誌で連載された作品を2010年に単行本として発刊したものである。

相変わらずこの作家の作品は考えられさせながら楽しい。
テーマが重いといえば思いのであるが、一つ作品を読み終えると次の作品に読み移る。
そうしてあっという間に一巻が終わってしまうのだが、毎号掲載される作品ではないからなかなか単行本が出るのが遅い、それが唯一残念である。
作品のレベルを落とさないためには必要なのかもしれないが、早く読みたい。
わがままな要求なのである。
(A+)

2010/08/11

岩波書店 同時代ライブラリー 321 『土門拳エッセイ集 写真と人生』阿部博行 編 を読む

本著は土門拳の戦前・戦中・戦後のエッセイを1997年に編纂して刊行したものである。

写真家の一人として土門拳の作品にはひととおり眼は通している。
学生時代、少ないこずかいを工面して『古寺巡礼』を購入してからの付き合いである。
しかし、文章のほうは残念ながら3分の1くらいしか読んでいない。
気になる本はあるのだが、なかなか手を出せずにいた。
本著はいわばダイジェスト版である。
とりあえず手にして読み始めたのである。
本著の土門拳は写真家というよりも著述家である、それだけ文章が上手い。
土門拳が推し進めたリアリズム運動は写真作品も当然のこと、こういった文章でも理論付けられていったのであることがよくわかる。
しかし、8月のこの時期に読んでいると、戦前・戦中の土門の主張が戦後何の反省の表明もなく、いわば唐突に“民主的”になってきていることに違和感を感じ得ない。
人間・土門拳の限界がそこにあったのかもしれない。
(A+)

2010/08/09

コニカミノルタプラザを訪れる

久しぶりにコニカミノルタプラザを訪れた。

コニカミノルタプラザ

〔ギャラリーA〕
二石友希写真展「See You In The Pictures 2010」

この作家のポートレートはモデルの一般的な完成されたイメージをなぞるのではなく、作家が自ら見つけ出したイメージを印画紙に焼き付けることによって成功している。
決して奇をてらうことなく、作家の素直な視線なのだと思う。
こういうポートレートならいい、撮ってみたいとも思う。
(A)

〔ギャラリーB〕
阪口智聡ピンホール写真展「時の旋律」

「ピンホール写真」の写真展なのだそうだ。
ピンホール写真に魅せられて撮り続ける人も多いというが、回折のにじみが多い不鮮明な写真のどこに魅力を感じるのか、私には理解できない。
この写真展に展示されている作品が、そういった低性能の“レンズ”を使うことにって効果的に演出された優れた作品に昇華できたのだろうか。
私にはとてもそうとは思えないのだが。
(C)

〔ギャラリーC〕
瀧浦秀雄写真展「東京物産」

この写真展は俺を当惑させた。
被写体の傾向が私と似ているのである。
ただただ東京にある異なものを撮る。
俺の作品が独りよがりで面白くも無いということがわかってしまったのだ。
異なもので人の眼を止める、その方法論は間違っていないと思うのだが、その先が必要だ。
それをわからせてくれた写真展なのである。
(B-)

2010/08/08

小学館 BIG COMICS SPECIAL BCS0549 『宗像教授異孝録 3』星野之宣 著 を読む

本著は2005年に「ビッグコミック」誌で連載された作品を2006年に単行本として発刊したものである。

本巻では「徳川家康の甲賀・伊賀超え」「物部氏と鬼」「出雲大社」が俎上に上がった。
“異考録”とはよく付けたタイトルで、「際物学説」と捉えられるのかもしれないが、物語がよく作られているので思わず引き込まれてしまう。
こういった“トンデモ学説”が考古学や民俗学への興味を誘ってくれるのであればよいのではないかと思うがどうだろうか。
(A+)

2010/08/07

小学館 BIG COMICS SPECIAL BCS0519 『宗像教授異孝録 2』星野之宣 著 を読む

本著は2005年に「ビッグコミック」誌で連載された作品を2006年に単行本として発刊したものである。

本巻では「花咲爺」「卑弥呼」「七夕」が俎上に上がった。
参考資料や協力者の文献に目を通していないからわからないのだが、この作品で展開される考察が“トンデモ”学説なのかどうかはどうでもよくなってくる。
それほどこの作品の出来がいいように思えるのだ。
古代史や民俗学の本を紐解いてみたい気にもさせる。
それだけではない、作品としての完成度もなかなかのものである。
エンターテーメントとしても満足できる作品である。
(A+)

小学館 BIG COMICS SPECIAL BCS7822 『宗像教授異孝録 1』星野之宣 著 を読む

本著は2004年から2005年にかけて「ビッグコミック」誌で連載された作品を2005年に単行本として発刊したものである。

「宗像奇伝教授シリーズ」が掲載誌を変え登場である、魅力のあるキャラクターなのでありがたいと思う。
本巻では「イタコ」「甲斐武田の金山」「聖徳太子」「インド仏教」が俎板に上げられている。
協力・参考文献があるとしてもこれだけ自由に古代・中世の世界を自由に創造していくこの作家の実力に感心する。
歴史・民俗学といえば重苦しく感じるのだが、この作品を読んでいるとわくわくさえしてくる。
力作であると思う。
(A+)

2010/08/06

小学館 BIG COMICS SPECIAL BCS7821 『神南火 -忌部神奈・女の神話シリーズ-』星野之宣 著 を読む

本著は2001年から2004年にかけて「ビッグコミック」誌で連載された作品を2004年に単行本として発刊したものである。

本著は同じ作家の「宗像伝奇教授シリーズ」の登場人物、忌部神奈を主人公にしたサブシリーズである。
作家がなぜ本編でこのサブシリーズのエピソードを使わなかったのかは謎である、本編でも無理なくストーリーは展開できたと思う。
もしかしたら宗像伝奇というキャラクターと敵対する忌部神奈というキャラクターのできの良さに賭けてみたくなったのではないだろうか。
その結果は成功したと思うのだが、いかがであろうか。
(A)

講談社 ヤンマガKC1918 『イニシャルD 41』しげの秀一 著 を読む

本著は2009年から2010にかけて「ヤングマガジン」で連載されたものを2010年に単行本として発刊したものである。

この作品の前回の掲載が2009年12月であるから8ヶ月もかかったということである。
いよいよこの作品も末期に来ているのである。
いや、作品が結末に近いのではなく、この作品が成り立たなくなってしまい末期を迎えたということである。
しかも、この巻ではサイドストーリーとでも言うべき“脇道”のストーリーが展開されている。
あまりにも間隔が長かったせいもあるが、40巻を買い忘れたかと思ったほどである。
もう作品としては破綻しきった感がある、一刻も早く連載を終結したほうがいいのではないだろうか。
(C)

2010/08/01

映画『借りぐらしのアリエッティ』 を観る

待望のスタジオ・ジブリの映画である。
ジブリの映画というだけで過大な期待がかかってしまうので、この映画にとってはちょっと不利であったかな、と思う。
物語はしごく淡々と進められていく、心沸き肉躍るといった活劇シーンはない。
実に淡々としたものである。
ストーリーも単純であり、比較的上映時間も短い。
なんか拍子抜けしてしまった。
しかし、反芻していると良く作りこまれた映画だということがわかってくる。
この映画、比較的年齢層が高いところを狙っているので評価が厳しくなるのでは、と懸念する。
しかし、監督が新人だということも何の問題もなく、良質の映画になっていると思う。
やはりジブリ映画はすばらしいと思う。
(A)