sat's blog

2010/04/28

彩図社 『社名は絶対明かせない 鉄道業界のウラ話』佐藤充 著 を読む

本著は2010年にWebサイト「鉄道業界の舞台裏」を元に単行本としてまとめられ発刊された。

この作家がサブタイトルに書いた社名はこの本を読んでいけば簡単にわかる、わからなければおかしい。
たぶんペンネームであろうこの作家の実名も、この会社は当の昔に把握していることだろうと思う。
国鉄の「民営・分割化」前後からの一連の書籍からするとインパクトは一段落ちるが、“国鉄時代から考えると見違えるようになった”鉄道会社にとってはかなりのインパクトのある一冊になったのではないかと思う。

項目項目はある程度のインパクトがあるが、どうして“そういう会社”になってしまったのかは理解できていないように感じてならない。
「国家的不当労働行為」と呼ばれる国鉄の「民営・分割化」以後の世代なのだからだろう。
不採用事件は国との和解がとりあえず成立する見込みである。
今は事を荒立てない、という“大人の対応”で事実の記録は、公表は先送りになるのだろう。

何年か先にはきちんと総括をした書籍、そしてそのときの現状を告発する書籍が出てくるのであろうか。
その時代の研究者に任せなければならないことなのか、複雑な思いである。
(A-)

小学館 BIG COMICS SPECIAL BCS3117 『新ブラックジャックによろしく【移植編】 8』佐藤秀峰 著 寺澤広蔵 編集 を読む

本著は「週刊ビッグコミックスピリッツ」誌上で2009年から2010年に連載したものを単行本として2010年に刊行したものである。

この作家はどうしてこういった困難な題材に向かうのだろうか。
結論の出たものを、世間で一定の世論が形成されているものを描いたところでドラマにはならないとは思うのだが、方向性が定まっていない問題に果敢に挑んでいく。
だから物語に引き込まれていくのであろうが、作家としての産みの苦しさは想像できる以上のものなんだろう。

この作家は作品外の事でよく“事件”を引き起こしている。
ある意味、この作品の主人公のような性格なのであるのかもしれない。
数日前、次号コミックスの表紙は描かないと宣言したと報道があった。
「おかしいと思ったものはやるべきではない」という信念を持っているのだろう。
そうした作家の心情が作品にも、ストーリー展開にも反映しているように思えてならない。
【移植編】も大詰めである。
この作家は【移植編】でこの物語に決着をつけるのであろうか。
書籍という発表メディアに執着を持っていないような発言も行う作家であるから、雑誌上での発表からWebに発表の場を変えていくのかもしれない。
でも、あえて言わせてもらえば「私は書籍で読みたい、持っていたい」と思う。
(A+)

2010/04/26

小学館 レアミクス コミックス RMC015 『忍者武芸帳 影丸伝 15』白土三平 著 を読む

本著は1962年に貸本として刊行された単行本を2010年に復刻・刊行されたものである。

本巻では主人公方の影一族が壊滅してしまう。
この作家のことだからどんなどんでん返しがあるのかわからないが、来月刊行される次巻が待ち遠しくなる。
そしてあと2巻ぽっちでここまで拡げた物語にどう決着をつけるのであろうか。
興味深々なのである。
(A+)

小学館 レアミクス コミックス RMC014 『忍者武芸帳 影丸伝 14』白土三平 著 を読む

本著は1962年に貸本として刊行された単行本を2010年に復刻・刊行されたものである。

本巻で残りはあと4巻である、物語もラストスパートに向かって進みだしたという配分というところである。
しかし、一向に先が見えてこない。
歴史の流れを書き込む作家を読みきれていないのだろうか。
この骨太の作品は何回か読み直さないといけないようである。
(A+)

2010/04/23

自民党が解けだした

ついに自由民主党が解け出した。
元々権力の中心に座っていたからこそ有象無象が集まっただけの“政党”である、解け出すのは時間の問題だったに過ぎない。

現在の政権政党、民主党も基本的には変わりはない。
この十数年来、意図的に流され誘導されてきた二大政党制も日本という国ではこんなもんなのである。

日本国民は自らの手で権力を奪取した経験がないから真の民主主義を理解できていないのだ。
「腐り果てた自由民主党」と「何の期待も果たせなかった民主党」、「教祖様を崇め奉り守るためだけの公明党」などが一定の票を集め政権に入れる、民意の低さを象徴的に示しているのではないだろうか。

今年は参議院議員選挙がある。
自由民主党を離れ、数年経ったら忘れ去られてしまうような名前の政党が雨後の筍のように結成されている。
成熟した民主主義の国の国民ならば、選挙協同組合的な“政党”を許すわけがないだろう。
「日本国民の民主主義の成熟度はこんなものか」、こう諸外国から言われぬようにしなければならないのだが、残念だけれどあと数十年は無理なのではないだろうか。

講談社 アフタヌーンKC656 『新装版 ヨコハマ買い出し紀行 8』芦奈野ひとし 著 を読む

本著は2002年から2003年にかけて「月刊アフタヌーン」誌上で連載されたものを単行本化し、2010年に新装版として再単行本化したものである。

ここのところ毎月1冊出るこの新装版の出版日が待ち遠しい。
人と“ロボットの人”が共に暮らす事に違和感を感じさせない不思議さ。
この第8巻では“ロボットの人”丸子マルコが中心に物語が進む。
主人公である“ロボットの人”初瀬野アルファの嫉妬していた心がだんだんと開いていく過程がほっとする。
全10巻であることは既にわかっている、あと2巻だ。
もっともっと読んでいきたい作品なのだが、別れが近いようだ。
期待を裏切らず最後までいくのだとは思うのだが…。
(A+)

2010/04/22

徳間書店 RYU COMICS 『あさりよしとお短篇集 毒入り 〈錠剤篇〉』あさりよしとお 著 を読む

本著は2010年に刊行された。

書名どおりの“毒入り”が〈カプセル篇〉よりますますエスカレートしている。
「重箱の隅」が秀逸である。
ゲーム業界、アニメ業界を滅多切りにしている。
手塚治虫氏への批判のしかたを宮崎駿氏が正統だとすると、パロディの毒に包まれたこの作家の批判は強烈である。
しかし、どのような大家に対してでも臆することなく己の武器であるマンガで堂々と闘いを挑むこの作家の姿勢はすばらしいと思う。
(A+)

2010/04/20

私は何に真剣に怒っているのだろうか

井上ひさし氏がなくなったのはショックだった。
氏の作品も、氏の平和運動に取り組む姿にも感動したものだった。

マスコミが流すたくさんの有識者の氏への追悼の言葉の中に、「怒りが作品に込められていた」というものがあった。
そうか、創作活動において想像力を掻き立てるものは「怒り」であったのか。
私の作品が人々の共感を得ないのは独りよがりの自己満足であって、作家の強い怒り、主張がなかったのだ。

しかし、「今の世の中はおかしい」と思いつつも怒りになるまで昇華させられない自分がいる。
これが井上ひさし氏と私の一番大きな違いなのだろう。
そうだ、「怒り」を持とう、探そう、自分自身の真の「怒り」を。
何かが変わるきっかけが得られたような気がする。

徳間書店 RYU COMICS 『仮面ボクサー』島本和彦 著 を読む

本著は2010年に発刊された。

この作家の作品は言ってしまえば“勢い”だけである。
ストーリーとか絵柄は二の次なのである。
そう、“勢い”さえあればいいのである。
こんな作家、作品もあってもいいだろうと思う。
(A-)

2010/04/19

バカな市長におかしな市議

阿久根市長の民主主義を何たるかを知らないかにも呆れ果てているのだが、市長派市議の出した「市長不信任決議案」には恐れ入った。
作戦とはいえ、否決するために議案を提出するとは議会をもてあそんでいると言っても過言ではないだろう。
市民をあまりにもバカにしすぎである。

2010/04/16

小学館 少年サンデーcomics SSC2259 『クロスゲーム 17』あだち充 著 を読む

本著は2009~2010年に「週刊少年サンデー」に連載された作品を2010年に単行本として刊行したものである。

この作家の作品は悪く言えば「マンネリ」であり、よく言えば「安心して読める」ものである。
この作品は高校野球の場を借りてはいるが、「野球マンガ」として見る必要はない。
もちろん場を借りている高校野球もきちんと描かれているのではあるが、思春期の少年少女を描いた作品なのだ。

この作家はもっとも「週刊少年サンデー」らしい作家だと思うのだが、どうだろう。
(A)

大丈夫か

友人が小説を出版した。
インターネットで出版元を検索したところ、いろいろな“トラブル”にまみれた出版社であった。
自費出版や共同出版を主に扱う出版社であり、企画出版はほとんど取り扱っていない。つまり、出版費用は作家も支払うのである。
出版社のウェブサイトには具体的な出版費用が出されていないので「騙された」方々の書き込みからの情報なのだが、1,000部発行するのに160万円~200万円もかかるという。1冊あたり原価が1,600円~2,000円ということだ。
ところが友人の小説の販売価格は1,260円である。そう、すべて売れたとしても赤字なのである。
しかも、その出版社の出版物は大手取次ぎに回るわけではなく、提携書店のうちの300店に1冊ずつ配本されるだけである。幸運なことに書店に配本された書籍がすべて売れたとしても、残り700部は注文でしか売ることができないのである。
う~ん、大丈夫なのだろうか。
出版費用に200万円近くかけて印税が数万円ということも書き込まれていた。
作家気分を味わうには高すぎる出費と言わなければならないだろう。

2010/04/14

『大哺乳類展 陸のなかまたち』国立科学博物館 を見る

本展示会は「国際生物多様性年」「E.T.シートン生誕150周年」「W.T.ヨシモト生誕100周年」を記念しておこなわれたのだというが、そんなことはどうでもいい。
これだけの展示物を一同に揃えた関係者の努力に敬意を表したい。
今日は平日だというのに結構会場には人が集まっていた。
こういう特別展示をしっかりと見るには平日が一番である。
休日だと「なぜこんな人まで来ているんだろう?」という人だらけでゆっくりと見ることができないのだ。

しかし、哀れなのは“一般展示”である。
国立科学博物館の展示は昔と比較してもかなり見やすくなっていると思う。
学芸員ら関係者の努力に敬意を表するものだが、いかんせん入場者が少なすぎる。
はっきりと言えば「もったいない」のである。
国立科学博物館の展示物は収蔵物のごく一部である。
一般人には見ることのできない収蔵品がたくさんあるのである。
TDRに3回行く暇があるのなら1回は国立科学博物館を訪れてもらいたいものだと思う。
そうなれば「事業仕分け」で不要とされることなく、新新館の建築予算が通るのではないかと思う。
昔見たいろいろな動物の「脳のホルマリン漬けの標本」などまた見てみたいものだと思うのだが。

2010/04/13

徳間書店 RYU COMICS 『青空にとおく酒浸り 1』安永航一郎 著 を読む

本著は2006年から2007年までに「月刊COMICリュウ」に掲載された作品を2010年に単行本として刊行したものである。

この作品は、この作家ははっきり言って“下品”である、とてつもなく“下品”である。
しかし、同じ“下品”でも明るい“下品”なのだ。
この作家にとって“下品”は褒め言葉なのではないだろうかと思うほどである。
こういう“下品”な作品は好きである。
ジメジメとした下品なぞクソ食らえなのだが、“下品”も個性として認めてもいいのではないかとも思う。
(A-)

2010/04/09

講談社 モーニングKC1891 『-ガキの頃から- 一色まこと短編集』一色まこと 著 を読む

本著は1990年から2004年までに「ビックコミックスピリッツ」などに掲載された作品を2010年に単行本として刊行したものである。

久しぶりの一色まこと氏の作品である。
『出直しておいで』など、一色まこと氏の作品は大好きであったはずなのだが、ずいぶん久しぶりに買った作品である。
なぜだか不思議である。

この短編集も楽しい作品が集められている。
なんだか読んでいて、せつなく、ジーンとくる作品が集まっている。
まだまだ集めたい作家がたくさんいるのである。
(A+)

講談社 KCDX2893 『攻殻機動隊 SYAND ALONE CONPLEX EPISODE 1 SECTIONS』衣谷遊 著 を読む

本著は2010年に「ヤングマガジン」に掲載されてた作品を2010年に単行本として刊行したものである。

「攻殻機動隊」と言えばやはり士郎正宗である。
攻殻機動隊の作品を読みたかったのだが、やはり士郎正宗のイメージが強く残ってしまう。
なぜ、衣谷遊なのかは分からないのだが、読んでみると士郎正宗のイメージが強く残ってしまい、違和感が残ってしまうのである。
(A-)

徳間書店 RYU COMICS 『あさりよしとお短篇集 毒入り 〈カプセル編〉』あさりよしとお 著 を読む

本著は2010年に刊行された。

書名どおりの“毒入り”である、すさまじい毒である。
私はこういう毒が好きだからたまらない。
特に『プロジェクトT』がいい。
言わずと知れた、『イニシャルD』のパロディである。
パロディの真価というものは、元作品をおちょくるのではなく、元作品を“持ち上げる”ことにあるのではないか。
この作品では表面的にパロディしているのではない、本質的にやっているのだ。
それだけに“あくが強く”、楽しい作品になっている。
作者の博識が作品中の登場人物の発言を笑えるものにしている。
いやいや、これだけ『イニシャルD』に喧嘩を売った作品も珍しいのではないか。
大爆笑であった。
(A+)

新潮社 BUNCH COMICS 『コンシュルジュ 19』藤栄道彦 漫画 いしぜきひでゆき 原作 を読む

本著は2009年から2010年までの「週刊コミックバンチ」に掲載された作品を2010年に単行本として刊行したものである。

本館を読んでみて初めに思ったことは、第18巻で主人公が違和感として思ったアメリカのホテルの話題が本巻で進展して行くのかと思ったのだが、実にあっさりと進めてしまったことにある。もっと日米の慣習の違いに主人公が悩む姿が見たかったように思う。

まあ、ストーリーは場所が日本からアメリカに変わっただけであり、それほど大きな変化はない。それに期待していただけに裏切られた気分でもある。
(A-)

2010/04/05

角川グループパブリッシング Kadokawa Comics A KCA274-1 『新世紀エヴァンゲリオンコミックトリビュート』ヤングエース編集部 編 カラー・GAINAX 原作 を読む

本著はイラストを含め19人の“エヴァンゲリオン”派生作品をまとめ、2010年に単行本として刊行したものである。

思わず買ってしまったが、プロフェッショナルの作家による“同人誌”である、これは。
いくら「本編」の進行が遅いとしても、こんな本まで出して商売をするというのにははっきり言って呆れてしまう。
(C)

角川グループパブリッシング Kadokawa Comics A KCA12-12 『新世紀エヴァンゲリオン 12』貞本義行 漫画 カラー・GAINAX 原作 を読む

本著は2007年に「月刊少年エース」、2009~2010年に「ヤングエース」に連載された作品を2010年に単行本として刊行したものである。

ずいぶんと11巻からこの12巻が出るまでに時間がかかったものだと思う。
それだけ「新世紀エヴァンゲリオン」の人気が一人歩きして作家をも超えてしまっていたからではないかと思う。
そもそも15年も前のアニメのコミカライズからスタートした作品であるが、アニメ自体は当の昔に終結し、映画化も二度にわたって行われている。
その都度ファン層を拡げてしまっているから、単なるコミカライズとして作品を終息に向かわせるのは無理があるのだろう。
長い休止期間は作家の苦悩を物語っているような気がする。
主要な人物が死んでいき、この先どうなってしまうのだろうと思う。
作家にはもう少し頑張ってもらいたいと思う。
(A)

2010/04/02

小学館 BIG COMICS BC3107 『電波の城 10』細野不二彦 著 を読む

本著は2009~2010年に「週刊ビッグコミックスピリッツ」に連載された作品を2010年に単行本として刊行したものである。

最近のこの作者の作品は「暗い」ものが多いように思う。
いや、「暗い」のではなく、「重い」のかもしれないが。
私はこの作者のデビューの頃の子供向けの純真無垢な作品や、ちょっと前の『ギャラリー・フェイク』のような作品が好きなのだが、作家が自分で好きな作品を書き上げているのはいいことだと思うし、その作家を評価するうえではそういった作品を抜きにしては考えられないのだろうと思う。
私の好みを抜いたとしたら、この作品は良くできているものであると言えると思う。
そう、次巻が気になるのである。
(A)