sat's blog

2009/03/28

病院でストレスをを治療し、コニカミノルタプラザを訪れる

久しぶりに写真展を見ようと思い、コニカミノルタプラザを訪れた。


コニカミノルタプラザ

〔ギャラリーA〕
フォト・プレミオ
FOTO PREMIO
鈴木 洋見(Dai)[origin of humanbeing Ethiopia]

ほとんど立ち止まることがなかった、つまり直接感性に訴えてくる写真が少ないのだ。
エチオピアを撮り切ったとは言えない、まだまだほんの一部を切り取っただけだ。
技術的にも「?」が頭に浮かぶ写真も多い。
この作家は何を言いたかったのだろうか。
肝心なそれが写真には現れていないのだ。
(B-)

〔ギャラリーB〕
フォト・プレミオ
FOTO PREMIO
大丸 剛史[箱]

そこには人間が一人も写っていない、生活感のない建物ばかりだ。
これでもか、これでもかと同じような写真が続き、「私と同じようなものを撮るなぁ」と苦笑してしまう。
人間の生活している空間はこれまでに非人間的なのか。
『箱』というタイトルを妙に納得してしまう。
(B+)

〔ギャラリーC〕
小川康博写真展 [河の記憶 長江2002~2007]
三峡ダムの完成により水没する中国長江中域、その風景を収めた写真展だということだ。
作者の“感傷”が出ているからなのか、“現代写真”がこういうものなのかはわからないが、全体的に非常にけだるい。
モチーフ、テーマと作品が一致しているのだろうか。
触ると手が切れてしまうような鋭い写真が見たくなった。
(B-)

新潮社 新潮文庫『結婚しよう』アップダイク 著 岩元巌 訳 を読む

久しぶりに読む長編小説である、しかも米国人作家による“ラブ・ストーリー”なんだそうだ。

題名だけで本書を選んだのだが、「結婚しよう」としている男女はそれぞれに家庭のある男女、つまり不倫をしており、離婚し再婚しようというものであった。

小説はどこまでその設定や登場人物にのめりこめるかによって楽しさが変わるのだが、“不倫”をテーマとしていることがわかってから、かなり読むことが辛くなってしまった。
そう、その設定にのめりこめていかないのだ。

著者も離婚をし再婚しているから、自分の体験がこの作品に少なからず影響を出しているのではないかと思う。

しかし、なんだか自分を合理化する男性主人公に嫌気がさし、女性主人公にはなぜこんな男性に魅かれるのかわからなくなる。
「結婚」に幻想を持ちすぎなのだろうか、「不倫」を一面的に悪視するのはおかしいのだろうか。

こういう現実もあるのだろうが、今の私には合わないな、と思うしかなかった。

(C)

2009/03/26

角川書店 あすかコミックスDX『新世紀エヴァンゲリオン学園堕天録3』眠民 漫画 GAINAX・カラー 原作 を読む

すみませんというしかない、またしてもマンガ、しかも『新世紀エヴァンゲリオン』の派生作品である。
通常は作者にハマるのであるが、『新世紀エヴァンゲリオン』にハマってしまったのである。

『新世紀エヴァンゲリオン』の基本設定を元に新しい作品を次々に生み出す手法は、過去の「角川映画」の手法の応用と言っていいものだろう。

この作品は学園を舞台にしているがコメディに走るのではなく、少々暗めになっている。
1,2巻はそれが違和感を生んでいたのであるが、すこし慣れてきたのか収まったようである。
しかし、この作品をまだ語るのは早いような気がする。
今後の展開に期待しよう。

(B)

角川書店 角川コミックス・エース『新世紀エヴァンゲリオン碇シンジ育成計画7』高橋脩 漫画 GAINAX・カラー 原作 を読む

またもや懲りずにマンガである。
しかも、『新世紀エヴァンゲリオン』の派生作品である。

考えてみれば設定をそのまま、または少し変えていくつもの作品を作り出していく手法にまんまと乗せられてしまっているのである。
アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』や貞本版『新世紀エヴァンゲリオン』を学園コメディに置き換えてしまった設定は、前2者の暗く重いストーリーと異なり、まあ、それなりに楽しいものではある。
うん、まんまと乗せられているなぁ。

原作者や発行元は“美味しい”商売をしているなぁ、と思いながら楽しんでいるのである。

(A)

2009/03/14

クレヴィス『土門拳の昭和』を読む

本著は三越日本橋本店新館7階ギャラリーで行われていた 生誕100年記念写真展『土門拳の昭和』の図録であり、一般の書籍流通には乗っていない。

土門拳氏は強烈な写真をたくさん残しているが、末期は脳溢血を繰り返し、最後は意識不明のまま心不全で亡くなっているから、健康な身体で活躍をしたのはそれほど長くないのかもしれない。

また、酒田市の土門拳記念館ほどの展示もなく、図録も代表的な作品に絞っているため、余計にその印象が強くなる。

土門拳氏の顔は三つあると思う。
一つは戦前戦中のプロパガンダに加担していた時代の顔。
二つはリアリズム写真の先頭に立っていたときの顔。
三つは仏像や美術品を撮る顔。
そのどれもがつながって、“土門拳”となるのであるが、作品のためには頑固で一途な作家であったのであろうと思う。

リアリズム写真の流れの末流にいる者として、いつかは土門拳氏を超えなければならないと思う。
しかし、氏の作品は国境の山脈のように聳え立ち、近づくことさえ許してくれないかのようだ。

(A+)

2009/03/12

角川書店 単行本コミックス『地を這う魚 ひでおの青春日記』吾妻ひでお 著 を読む

またもやマンガである。

私は昔からこの作家がお気に入りである。
SFを少しちりばめたギャグのセンスはたいしたものだと思う。
しかし、ギャグマンガは己の才能を削り取りながら描かれるものらしい。
各種の賞を受賞した『失踪日記』に赤裸々に描かれていたように、ギャグを作り出す重圧に精神を侵されかけたらしい。
特に、“売れれば勝ち”のマンガ週刊誌に使い潰されていく作家は悲惨である。
「アンケートシステム」で下位に甘んじれば次の仕事は来なくなる。
己の身を削って作られたギャグに笑っているが、その生産方法の方がはるかに悲惨なギャグなのである。

その結果、この作家は多作を止め寡作となった。
もっと読みたいと思うのだが、この作家の作家人生を縮めるような無理な要求は出すまい。

欝と言う病気もあって少々暗いマンガではあるが、充分楽しめると思う。

身体をこれ以上壊さない程度でいいから頑張って欲しいと思う。

(A)

2009/03/11

小学館 少年サンデーコミックス『クロスゲーム』あだち充 著 を読む

マンガである。
この作家のマンガのテンポはいつも同じで“マンネリ”化しているが、そこに味があるのだから仕方がない。
野球以外のスポーツも題材に上がるが、やはり野球がこの作家も好きなのだろう、物語の流れがうまい。

また、少年少女の淡い恋心を横線に編みこんであるから物語に幅が出、同じような作品を書いていてもそのたびに質を上げ、人気も続くのだろうと思う。

安心して読んでいられる楽しいマンガである。

(A)

角川書店 角川ソフィア文庫『宇宙「96%の謎」宇宙の誕生と驚異の未来像』佐藤勝彦 著 を読む

本著は2003年に実業之日本社から『宇宙「96%の謎」-最新宇宙学が描く宇宙の真の姿』を改題して2008年に文庫として刊行したものである。

比較的新しい内容を紹介しているので、まだこなれていない難しい内容が豊富に盛り込まれている。
しかし、そのせいか図や解説がこなれておらず、ちょっと考え込んでしまうところもあった。

佐藤勝彦氏の著書は数多く持っているが、口実筆記である本著はあまり校閲してないのではないかと感じてしまう。
章によってわかりやすさが違うのだ。

しかし、最新の宇宙論に近づきたいのなら外せない一冊であることは間違いないだろう。

最新物理学の書籍はどんどん陳腐化が進む。
日々進化していく物理学についていくのは大変である。

(A)

2009/03/07

三越日本橋本店新館7階ギャラリー 生誕100年記念写真展『土門拳の昭和』を見る

三越日本橋本店新館7階ギャラリーに生誕100年記念写真展『土門拳の昭和』を見に行った。

比べるのは恐れ多いのだが、“鬼が撮る”と言われるほどの迫力のある写真の数々に悔しさを感じた。
悔しさというより嫉妬と言うべきかも知れない。
展示されている作品は私の年齢よりも若い頃から同年代、さらにその後まで続くのだが、同時代の私は何をやっていたのだろうかと思わざるを得ない。

写真展で見る作品は印刷物である書籍の写真とはやはり美しさが違う。

絶望感とも言えるほど叩きのめされた写真展であった。

(A+)

2009/03/05

朝日新聞社 朝日文庫『日本環境報告』本多勝一 著 を読む

本著は作者が朝日新聞や朝日ジャーナル、その他の雑誌や単行本などに発表したルポルタージュを編集し、1992年に発刊されたものである。

今は2009年であるから政治状況も大きく変わっており、本著の内容からずれてきているものも多い。
しかし、本書を読んでいると政治権力や大企業、大多数の無関心な日本人の意識が大きく前向きに変わってきたとは思えないのだ。

本著は文庫本でありながら657ページという大著である。
その内容は大企業にいいように食い物にされ、官僚の無知・自己保身のためにずたずたにされていく日本の豊かな自然の姿をリアルに報告する。
その内容は救いようがない。
しかし、その救いようのない日本の姿を推し進めたのは結局のところ無知で無責任な日本人なのだ。

報道などで破壊され行く姿を見ればほとんどの者が「酷いねぇ」というくせに、スキーだ釣りだとなればそこにある自然破壊から目をそらせてしまうのである。
目の前にエサをちらつかされると飛びついてしまう、日本人の意識などそんなものなのだとの著者の叫びが聞こえてくるようだ。

本著は古書で購入した、レポートの資料にでもしたのであろう。
それがわかるのは、657ページの最後の最後、あとがきにのみ罫線が引かれ、コメントが書き込まれてあったからだ。
ああ、こういう著書を買うのなら全部しっかりと読んで欲しい。
あとがきの数ページを読んでレポートを書くような貧困な意識の学生が、将来大企業なり官僚機構に所属して日本をずたずたにしていくのではないのだろうか、そんな気がしてならない。

(A+)

ジャイブ株式会社 CR COMICS『ヴァイスの空』 あさりよしとお 原作 カサハラテツロー 漫画 を読む

くどいと思われるだろうが、またしてもマンガである。
この作品は2002年に学習研究社の「4年の科学」に連載され、2003年6月に同社より単行本として発刊されたものに加筆・再構成したものである。

本著を買ったのは、あさりよしとお氏のファンであるからであり、カサハラテツロー氏には申し訳ないけれどよっぽど絵柄が合わないものでない限り購入はためらわなかったであろう。

初出誌が「4年の科学」であるというとおり、想定された読者は小学校4年生である。
その年代にSFマンガというのは冒険であるとも思われるのだが、“科学誌”であるということから導入されたのであろう。
想定読者が小学4年生と明確に定まっているために、SFとはいえわかりやすさを重視しているのであろう。
SF作品として考えるならもう少しひねりが欲しいところであるが、やむをえないところである。

実は学習研究社版の単行本も所有している。
たぶん、その版は連載時の作品をほぼそのまままとめたのであろう。
今回のジャイブ版はかなり大幅に加筆・再構成されており、同じ作品と思えないくらい質の向上が図られている。

あさりよしとお氏はマンガ原作者でなく、マンガ作家である。
マンガ作家をなぜ原作者にしたのか、担当編集者のセンスの現われなのであろう。
マンガ作家+マンガ作家の組み合わせがなかなか面白い作品に結実したと思う。

(A)

2009/03/04

小学館 BIG COMICS『鉄腕バーディEVOLUTION』ゆうきまさみ 著 を読む

申し訳ないようなんだが、またしてもマンガである。

この作家の作品に最初に出会ったのは『究極超人あ~る』ではなかったかと思う。
比較的年齢も近く、ギャグのセンスに親近感を持った。
後で知ったことだが“原田知世つながり”もあって、ますますこの作者が好きになったように思う。

一見、マンガ全盛の日本のようであるが、マンガ作家にとっては決してよい環境のようではない。
この作品にしても元々は「週刊ヤングサンデー」誌に連載されていたものであるが、同誌の休刊により「週刊ビッグコミックスピリッツ」に移った作品である。
休載や打ち切りよりははるかに良い待遇であるが、掲載誌の都合で物語に一区切りつけなければならなかったであろうし、なによりもマンガというジャンルの不安定な環境を露呈させたものであると思う。

この作家の作品の中には『パンゲアの娘 KUNIE』のように伏線を張り巡らせ終わったときに“アンケート下位”を理由にして打ち切られたものもある。
もちろん作家も多いし、発表メディアも限られているのだから「打ち切り」もあるだろうし、「ドラゴンボール」のように作家の意図から離れた連載の長期化もマンガを商品としてみたときにはやむをえないことなのかもしれない。

しかし、良質のマンガを供給しようとするのなら作家の考えをもっと反映できるシステムが必要なのではないだろうか。
あまりにも出版側の意向に引きずられすぎては良い作品も生まれてはこないだろう。